手作りご飯への道のりモアナのご飯は、基本的に生食(生のお肉や魚+野菜や果物、BARF: Bone & Raw Food 又は Biologically Appropriate Raw Foodの略とも)ですが、加熱食(おじやまがい)も時々あげます。また、繁忙期には稀ですが既製のフードもあり。 以前膿皮症と診断されたコとは思えない、ビロードのような皮毛と結構骨太な骨格、モモ焼きにすると美味しいかも?と言われるたくましいアンヨの持ち主は、日本テリアとしてはデカコちゃんの4.5Kg。でも現在(7ヶ月)、我が家で一番スリムでカッコイイ(笑) こんなモアナですが、我が家へ養女に来て(3ヶ月半)間もなく、お医者様からは「小さい時から膿皮症にかかるコは、アレルギーの可能性が高いですよ。一生気を付けてあげないと」と言われたのです。処方されたお薬は、かゆみ止めの錠剤と化膿した湿疹を直す抗生物質でした。 子犬を迎えるにあたり事前に調べて愕然としたのは、アレルギー、アトピーなど皮膚症状で悩むペット達の姿。転院を繰り返したり、フードジプシーとなってでも何とか救える手だてはないかと悩む飼い主さんの涙の闘病記。体をかきむしり血まみれで苦しむペットをとうとう安楽死に依頼するお話etc。ネット検索でヒットした数の多さとその内容に唖然としました。でも、それがまさか我が子にも及ぶ話…とは思いもしなかったのです。 獣医さんの「一生!」という言葉に打ちのめされて、それから何とかならないかと必死であれこれ調べまくりました。皮膚に現れる様々な症状は、アレルギーが原因の他にも、抵抗力がないため(或は虚弱体質)故の場合もあることが分かってきました。 モアナの場合、正式な診断名は「細菌性膿皮症」ですから、湿疹や小さな傷が細菌によって感染して化膿している訳です。実際、病院で殺菌成分の多いシャンプーで薬浴療法を受けたら、てきめん状態がよくなったのです。 アレルギーの有無は不明だけど、現時点での診断からすれば、細菌感染への抵抗力を強化すればいいわけで、抵抗力がつけば抗生物質を使わなくて済むんじゃないの?! 子犬は確かに抵抗力は低いけど、どの子犬も膿皮症になる訳じゃない。かからない仔は、体が丈夫だから、多少の湿疹でも小さな傷も化膿に至までに自然治癒するんだから。 自然治癒力を高める方法は、犬も人間も基本は同じだと思います。 つまり、健康な食事と適度な運動、ストレスの少ない生活が鍵です。 この中で直接体に働きかける効果が高いのは、やはり食事ではないでしょうか? という訳で、改めてモアナのご飯を見直すことにしました。 モアナは、はじめSダイエットの子犬用グロースを食べていました。これは、ブリーダーさん宅でも食べていたドライフードで、日米両国のペット業界で広く出回っているブランドです。 が、日本テリアには脂肪分の低いフードの方がよいとブリーダーさんから助言を頂いていたので、Sゴールドへ切り替えました。ご存知の方も多いと思いますが、Sゴールドは動物性脂肪を使っていないフードで、アレルギーを抱えるコには評判のいいものです。これで皮膚トラブルが直った例も多いそうです。 ところがSゴールドは脂肪分は低いのにカロリーが割合高い、という問題点がありました。 モアナに指示分量を与えていると、どうも太ってきてしまうのです。3度目のワクチンの時、腰のくびれがぼやけているからフードの量を減らすか別のフードにしたら、と獣医さんにも指摘されました。 でも、Sゴールドはせっかく切替えたアレルギー対応のフードです。それに、4ヶ月と言えば食欲魔犬状態で、食べても食べても欲しがります。 そんな時、キャベツやおからで量を増やしカロリーを控える方法を教わりました。そして、それ以降フードにトッピングする野菜や果物の種類の幅を少しずつ広げ、同時に手作りご飯の可能性にも着目するようになりました。 ある日、よく伺うサイトの掲示板に「生のお肉」の話が出ていました。更に、「家の子には二ヶ月から生肉を食べさせている云々」というレスが続いています。 この時点で「生食」や「BARF」についてある程度知識は得ていたのですが、子犬に生肉を食べさせる事へためらいがあって踏み切れずにいた私には、まさに「!」の書き込みでした。 それでも心配だった私が初めてモアナに与えた「生食」は、夕飯の残りの刺身とツマ(みじん切り)です。これなら人間だって食べているから、子犬が食べてもお腹を壊すこともないだろう、とか、今思うと笑ってしまう言い訳を心の内でしつつ、恐る恐るあげてみました。 モアナの反応ですか?そりゃあ、もう、喜びました。ガッツキ度がフードの時とは全く違います。 食べた後で顔を舐めにくるのが生臭くて参っちゃったほど(笑)。それくらい、もっと頂戴のアピールも凄かった。 その後、本村伸子先生の著書『愛犬を病気/肥満にしない健康ご飯』(書誌情報は「私の本棚」にあります)をじっくり読んでメニューや子犬への量を調べて、生食へ移行しました。 手作りご飯には生食の他に加熱食もありますし、また食材の選択では、穀類を与えるか否かの違いもあります。どのやり方も基本としている理論が異なり、それぞれに根拠があります。 また、実際に食事を与えるやり方でも、手作り食オンリーの場合もあれば、フードと併用の場合もあります。 このように食材や調理以外にも与える時間や回数、量の違いなど含めて考えると、実に多種多様な食生活があり、どの食材・どの与え方を選ぶかは、一重にワン仔と育ての親にかかってきます。 上述したように、モアナは基本は生食ですが、残りご飯が多い時はご飯をやることがありますし、野菜を刻む暇も惜しいという時は、肉にBW社の「菜」を振りかけて終わり、ということもあります。 また、時々あげるウエットタイプのフードはモアナのお気に入りですが、これが続くと家計への圧迫もありますし、また生食へ戻すときに腸のバランスが狂いがちと分かったので、これも私の都合と同時にモアナの体調とも相談です。 「ペットフードは、栄養のバランスのとれた完全食!」 これは、ペットを飼う人間なら日本中どこへ行っても聞かされ目にする言葉でしょう。テレビのコマーシャルでも、実に美味しそうにフードを食べる犬猫の姿が紹介されています。 でも、この言葉は本当でしょうか? 「完全食」の定義とは何なのでしょう? いつ、どんな材料で、どんな製法で作るフードが、完全なのでしょうか? 留学中に私が得た最大のものは、「常に批判的(分析の目を養え)であれ!」という指導教授の言葉です。 たとえ、それが自分の指導教授の論文/主張であっても、とまで付け加えて念を押されたのです。 (余談ですが、日本人留学生の陥り易い穴だ、と別の先生にもアドバイスされました) 私は、ペットフードを全否定するつもりはありません。上述したように、忙しい時にはフードを利用します。でも、それは人間ならインスタント食品に相当すると考えています。 ですから、手作りご飯にサプリメントを加えてバランスを整えるようにしたもの、を基本としてできるだけ守って行きたいと思っています。 加熱加圧処理で製造されるフードには、どんな良質の材料を使っても盛り込むことのできないもの、例えば酵素、があるそうです。この一点のみ取り上げてみても、ペットフードが「完全食」である、というのは明らかに誇大広告だと思います。この点を獣医師が指摘し、また研究論文でもとりあげるべきテーマであると思います。 (アメリカでは、フードとペットの健康や生殖の関係について研究した論文が発表されているようです。これだけペットブームが隆盛の日本でも、もっとフードとペットの健康について研究が進んでもいいと思うのですが) モアナは縁あって我が家の一員になりました。 我が家の一人娘であり、末っ子であり、孫娘です。 というと、人間と同列に置くなんて、というお叱りを受けそうですが、でもモアナが来て以来家の中が本当に明るくなりました。 口はきけなくても、全身全霊で混じりけのない愛情を私たち家族に向けてくれる可愛いお転婆ちゃんです。 そんなモアナのために私ができること、って…医食同源を人間のみならずモアナにも実行すること、ぐらいでしょうか。 |